相続した実家を2人で売却|同居・別居で概算手取りはどう変わる?

query_builder 2026/09/05
相続
相続した実家を2人で売却|同居・別居で概算手取りはどう変わる?


相続不動産を3,000万円で売却した場合の手取り額を、条件別に比較するシリーズです。


第2話では、同じ実家を2人で半分ずつ相続して同時に売却しても、相続人ごとの居住状況によって、検討できる特例や税金、手取りが変わるケースを比較します。


今回の設定では、親と同居していたAの概算手取りは14,467,000円、別の住居で生活していたBは約11,680,392円です。


同じ家を同じ割合で相続しても、税金が必ず同じになるとは限りません。




【今回のAとBの設定】


被相続人である親と同居していた相続人Aと、別の住居で生活していた相続人Bがいるものとします。


親の死亡後、AとBは家屋と敷地をそれぞれ2分の1ずつ相続します。

Aは相続前からその家で親と生活し、相続後は家屋と敷地の持分を所有したうえで、その家を自分の生活の本拠として引き続き使用し、その後売却する設定です。


Bは相続前も相続後も、その家には居住していません。


今回の比較条件は次のとおりです。


・家屋と敷地を第三者へ合計30,000,000円で同時売却
・売却代金、取得費、譲渡費用はA・B各2分の1で按分
・被相続人の購入価格は証明できず、概算取得費5%を使用
・仲介手数料:1,056,000円(税込・上限額を支払う前提)
・印紙税:10,000円(紙の契約書を作成し、軽減措置の対象となる前提)
・登記費用、測量費、解体費、残置物撤去費などは計算から除外
・固定資産税等の精算金は含めない
・住宅ローンなどの残債なし
・被相続人から引き継いだ所有期間により長期譲渡所得として20.315%で試算
・相続税の取得費加算、その他の特例は使用しない
・Aはマイホームの3,000万円特別控除について、本文記載以外の必要要件も満たすものとして比較
・Bはマイホームの3,000万円特別控除を使用しない


実際には、居住実態、所有関係、売却時期、過去の特例利用、売却先などによって適用可否が変わります。個別の税務判断は税理士または税務署へ確認してください。


2人に共通する売却益を計算する


まず、3,000万円の売却価格から概算取得費と今回計上する売却費用を差し引きます。


30,000,000円 − 1,500,000円 − 1,056,000円 − 10,000円
= 27,434,000円


AとBは2分の1ずつ所有しているため、今回の比較ではそれぞれ次の金額になります。


・売却代金 15,000,000円
・概算取得費 750,000円
・仲介手数料 528,000円
・印紙税 5,000円
・特別控除前の売却益 13,717,000円


売却代金から今回計上した仲介手数料と印紙税を差し引いた金額は、それぞれ14,467,000円です。


ここまではAとBで同じです。違いが出るのは、この13,717,000円の売却益に対して、Aがマイホームの3,000万円特別控除を適用する設定だからです。




A|自宅として住み続けていた場合


Aは、相続後もその家を自分の生活の本拠として使用し、所有者として家屋と敷地を売却する設定です。


今回は、Aが「マイホームを売ったときの3,000万円特別控除」の必要要件を満たすものとして比較します。


Aの特別控除前の売却益は13,717,000円です。


13,717,000円 − 特別控除13,717,000円
= 税金計算の対象0円


今回の条件では、Aの譲渡所得に対する税金は0円となります。


・売却代金の持分 15,000,000円
・仲介手数料・印紙税 ▲533,000円
・譲渡所得に対する税金 0円
・概算手取り 14,467,000円


3,000万円特別控除は、必ず3,000万円を差し引く制度ではありません。本人の売却益が3,000万円より少なければ、その売却益が控除できる上限になります。


今回のAの売却益は13,717,000円なので、控除額も13,717,000円です。


また、3,000万円特別控除は自動的に適用されるものではありません。控除によって譲渡所得に対する税額が0円になる場合でも、必要書類をそろえて確定申告する必要があります。


親と同居していたという事実だけで適用が決まるわけでもありません。住民票だけを移した場合や一時的に入居した場合ではなく、実際の居住状況を含めた制度要件を個別に確認する必要があります。


参考:国税庁「マイホームを売ったときの特例」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3302.htm




補足|控除後も売却益が残る場合は税率も確認する


売却益が3,000万円を超え、3,000万円特別控除を差し引いた後も税金計算の対象となる金額が残る場合には、「マイホームを売ったときの軽減税率の特例」という別の制度も確認する必要があります。


ただし、売却益が3,000万円を超えただけで、自動的に14.21%の税率が適用されるわけではありません。売却年の1月1日時点で、売った家屋と敷地の所有期間がともに10年を超えていることなど、一定の要件を満たす必要があります。


要件を満たす場合は、3,000万円特別控除を差し引いた後の課税長期譲渡所得について、6,000万円以下の部分に、所得税・復興特別所得税・住民税を合わせた14.21%の軽減税率を適用できる可能性があります。通常の長期譲渡所得の税率20.315%より低い税率ですが、課税長期譲渡所得が6,000万円を超える場合、その全額が14.21%になるわけではありません。


相続した不動産では、原則として被相続人の取得時期を引き継いで所有期間を判定します。ただし、軽減税率にはほかにも要件があり、適用を受けるには確定申告が必要です。実際に利用できるかは、税理士または税務署へ確認してください。


今回のAは、売却益13,717,000円が3,000万円特別控除の範囲内に収まり、税金計算の対象が0円になる設定です。そのため、今回の概算手取りの計算には14.21%の軽減税率を使用していません。


参考:国税庁「マイホームを売ったときの軽減税率の特例」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3305.htm




B|その家に住んでいなかった場合


Bは相続前も相続後も、その家に居住していない設定です。


そのため、今回の比較ではBについてマイホームの3,000万円特別控除を使用しません。


Bの売却益はAと同じ13,717,000円です。


13,717,000円 − 特別控除0円
= 税金計算の対象13,717,000円


長期譲渡所得の税率20.315%で試算します。


13,717,000円 × 20.315%
= 概算2,786,608円


したがって、


・売却代金の持分 15,000,000円
・仲介手数料・印紙税 ▲533,000円
・譲渡所得に対する税金 ▲約2,786,608円
・概算手取り 約11,680,392円


となります。


税額は端数処理や個別事情によって、実際の金額と差が生じます。


AとBでは概算手取りに約279万円の差


今回の比較では、


・Aの概算手取り 14,467,000円
・Bの概算手取り 11,680,392円


となりました。


差は約2,786,608円です。


同じ実家を2分の1ずつ所有し、同じ条件で同時に売却していても、今回の設定ではAだけがマイホームの3,000万円特別控除を適用するため、税金と手取りに差が生じています。


これは「親と同居していれば税金が安くなる」という意味ではありません。Aが相続後も所有者としてその家を生活の本拠にし、必要な要件を満たして確定申告した場合の比較です。


第1話と比べると、2人合計の概算手取りは約279万円増える

第1話では、購入価格を証明できず、特例を使わない場合の全体概算手取りを23,360,783円と試算しました。


今回の第2話では、


・Aの概算手取り 14,467,000円
・Bの概算手取り 11,680,392円
・2人合計の概算手取り 26,147,392円


です。


第1話との差は、


26,147,392円 − 23,360,783円
= 2,786,609円


おおよそ279万円です。


第1話は1人の単独所有、第2話は2人の共有という違いがありますが、売却価格、取得費、売却費用、税率などは同じ条件にしています。


そのうえで、第2話ではAの持分にマイホームの3,000万円特別控除を適用した影響を比較しています。


端数処理による差もあるため、シリーズでは約279万円の差として見てください。


Aの控除枠の余りをBへ移すことはできない


共有のマイホームを売った場合、3,000万円特別控除を適用できるかどうかは共有者ごとに判定します。


今回、Aの売却益は13,717,000円なので、Aが使用する控除額も13,717,000円までです。


最高3,000万円の控除枠との差額が残っていても、その余りをBの売却益から差し引くことはできません。


参考:国税庁「共有のマイホームを売ったとき」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3308.htm


今回は「相続空き家」の3,000万円特別控除とは別の制度


今回Aについて使用しているのは、A自身のマイホームを売った場合の3,000万円特別控除です。


第3話で扱う「被相続人の居住用財産(相続空き家)の3,000万円特別控除」とは別の制度です。


今回の設定では、被相続人である親は相続開始直前までAと同居しています。そのため、相続開始直前に被相続人以外の居住者がいないことなどを求める相続空き家の特例を使用する設定にはしていません。


相続空き家の特別控除については、第3話で改めて比較します。


参考:国税庁「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm


売却前に確認したい4項目


同じ実家を同じ割合で相続しても、相続人ごとの居住実態によって税金が同じになるとは限りません。


売却を考えているなら、遺産分割や相続登記を終える前から、次の4点を整理しておくことが大切です。


・相続開始前に誰が住んでいたか
・相続後に誰が住み続けるか
・家屋と敷地を誰がどの割合で取得するか
・いつ頃売却する予定か


税金だけを理由に取得者や持分を決めるのではなく、実際の居住状況や家族の意向、将来の売却予定を含めて整理する必要があります。


個別の特例の適用可否は税理士または税務署への確認が必要ですが、想定売却価格、売却費用、売却時期などの不動産側の条件を先に整理しておくと、税務上の確認も具体的になります。




シリーズ第1話はこちら


購入価格が分からず、特例も使わない場合
https://green-estate.jp/blog/20260904-7762/


関連記事

横浜市で相続不動産を売却するなら|相続登記前に確認したい特例と期限
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自分に近いケースを確認する


1.購入価格が分からず、特例も使わない場合(第1話)

2.居住状況の違いで、検討すべき制度や手取りがどう変わるか(今回の記事)

3.相続空き家の3,000万円特別控除を使う場合(近日公開)

4.購入時の資料があり、取得費と減価償却を計算する場合(近日公開)


相続不動産の売却前に、条件を整理したい方へ


まだ遺産分割や相続登記を決めていない段階でも、想定売却価格、売却費用、売却時期などを整理しておけば、税理士や税務署へ確認するときの前提が具体的になります。


個別の税額や特例の適用可否は税理士または税務署への確認が必要ですが、不動産売却側の条件は売却前から整理できます。


相続した実家・不動産の売却について相談する
https://greenestate.jp/consultation/#family-home


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